捕食者的思考遊戯





「セブルス」


泣くかな、と今までの経験から私は次の展開を予測した。

俯いて、唇をかみ締める彼を見てそう思った。それでも慌てることはなく、むしろ泣いてしまえばいいと無邪気さを装ってそうなることを希望した。

いつも取り澄ましているその青白い細面を羞恥心と悔しさで赤に染めて、真っ黒な瞳を潤ませて、そうして徹底的に歪ませてみたい。
ついでに、脂ぎって動きのない髪を乱れさせたら最高だ。


「セブルス。顔が見えないな、私に君の顔を見せてはくれないのか」


私はもう一度、この年の離れた後輩の名前を呼んでみる。

もう一押し。

私の心はいつになく昂揚した。こんなことは去年の長期休暇で一族総出でウサギ狩りに出かけたときくらいだ。

獲物を仕留める感覚で彼を見る。
もはや、セブルスは同じ寮の目を掛けてやっている後輩ではなく、巣穴に追い込まれた野兎に格上げされた。

悦に入って黒い野兎の旋毛にばかり目をやっていたら、その下から強い視線を感じた。

あの黒い瞳だった。冬場の井戸の底のように徹底した暗さと冷たさを孕んだそれは一瞬だけ、真っ直ぐに自分の灰色の瞳を射抜いた。

目があったと認識すると同じく、絶体絶命の兎は面をあげた。


「あいにくと、ルシウス先輩のお遊戯には付き合う時間がないので今日はこれで失礼させていただきます」




禍々しく口元を横に歪ませた社交辞令的な笑顔を見た瞬間、セブルス・スネイプはか弱い野兎からタフな狐へと格上げされることになった。