■ ハリーとセブ同棲話その4■
・ハリーはクィディッチのプロ選手
・セブは自宅のラボで薬学の研究に没頭
・ハリーは2階、セブは地下とお互いの領域が決まっている
・セブの領域への不法侵入は厳罰(ハリー限定で)
・1階のLDKが共有スペース
・食事とティータイムへの出席は必ず
注)「貧乏人は麦を食う」と少しだけ繋がっています。
Heinzelmaennchen
セブルスが今後の収入に関わる重要な書類を探し始めて数時間が経ったが、未だ書類は見つからない。
彼は生来の潔癖気味の気質もあってか日々身辺の整理整頓を心がけていたし少しの塵も影響をもたらす魔法薬学のラボを自宅に持ってからは潔癖さに磨きがかかっていた。なので自らの失せ物を探すのには長けていなかったのだ。
・・・他人の弱みを探すのにはものすごく長けていたのが
どうしたものかと悩んでいたらノックがした。
誰何の声を出さずともこの部屋に入ってくるのは一人しかいない
「先生!フルーパウダー、借りますよ」
所属チームのユニフォームを着た同居人が急いだ様子で部屋に入ってくる。
彼は勝手知ったるなんとやらで、フルーパウダーが入っている机の引き出しを開けた。
「・・・」
フルーパウダーの瓶は入っていたがいつもと違って、ホグワーツで2番目に規律にうるさいと言われ(因みに一番は自分のところの寮長)、生徒がら恐れられていたスネイプ教授の引き出しの中はめずらしくぐちゃぐちゃだった。
そして辺りを見回すと部屋中が引き出し同様、強盗被害にあったようだった。
「・・・セブルス。もしかして大掃除中?シワスは確か12月だからまだまだ先だよ」
この間、近所の酒屋にビールとつまみを買いに行った時に仕入れたこの国の慣習が彼の頭の中を駆け巡った。
「掃除をしているわけではない。探し物をしているのだ。」
そう訊いてハリーはきょとんとした。
「セブルスが探し物なんて珍しいね。何を探してるんですか?」
「・・・おまえには関係ない」
今や自分の倍どころか数倍の収入であるハリーに対してプライドというより年長者の意地が働いたセブルスは返答をキッパリと拒絶した。
探し物が見つからないと自分の収入がローティーンの小遣い並の退職手当しかなくなってしまうことなど口が裂けても言えない。
「う〜ん。おしい!でもねセブルス、僕はあなたの恋人で同居人であなたは僕の恋人で同居人。関係ないとは言わせないよ」
にべもないセブルスに笑顔でハリーは返した。
その翠の瞳を視界に入れたくなくて目を逸らすセブルスだったが、ハリーはセブルスの心情を知ってか知らずかセブルスより頭半分ほど高い長身を曲げる。
そして目の高さの少し下から窺い視てもう一言。
「探し物は一人より二人って言うでしょう?」
表情は笑っているが目が本気だ。
翠の視線に射られてセブルスは黙秘権を放棄した。
「公式文書サイズの羊皮紙を一巻、探している」
「羊皮紙って言われても、ここにいたるところにあります。内容をある程度教えてくれないとわからないよ」
3年前も結局この目、というか顔に負けてなし崩し的に今日に至っているのだ。3年前、ヴォルデモードとの抗争に終止符が打たれ、もはや自分がホグワーツにいる必要がなくなったと見た彼はその年に学校を去りイギリス、というより魔法界とは遠く離れた地で薬学の研究に没頭しようとしていた。
魔法界はヴォルデモードが残した混乱の後始末に追われ、元死喰い人である自分に対する世間の風当たりは決してよくなかったことも理由の一つだったが、とにかく彼は疲れていた。薬学以外は何もしていたくないと思うほどに。
彼が身をおく場として選んだのが日本だった。
日本はマグルと魔法族の垣根が欧州と比べて低く日本の魔法族はマグルに混じって生活している者も多い。エレクトロニクスの最先端を行く国のひとつであるにもかかわらず、建設工事をする際には神道の儀式で成功を祈ることをするなど、この国の人々の生活には今だに魔術が根付いているのである。
ちなみに日本の魔法界はマグル世界での日常レベルの魔法使用を禁じていないので外国人が音を上げる悪名高い高温多湿な夏も問題なかった。
そして劣悪な住宅事情の中からようやく見つけた自分の目に適うこの家のドアを開けたとき、この男は自分より先に家に入っていてちゃっかり荷物を入れていたのだ。
「ひどいよ。セブルス。僕に黙ってこんなところに隠居しようだなんて」
やはりあの時に追い出していればよかったのだろうか
学生時代、決して好きになれなかった男の息子、20以上年下でしかも元生徒。
いや、待て。それ以前に同性だ、とセブルスは冷静を保って自身にツッコミを入れた。
なぜ自分はこいつと一緒に暮らし、恋人などという青臭く苦くはない関係を結んでいるのだろう
脳内が過去へとトリップして思考のループに嵌まって悶々としているセブルスをかわいいなぁと思いながら、その元凶であるハリーはこちら住む前に一緒に暮らしていた自分の「家族」を思い出していた。
人並みに整理整頓を心がけ、というよりハリーの教育上、週に1度は掃除をしていたルーピン。
そんなことは全く気にせず、ハリーが荷物を取りにいった際に一緒に来ていたセブルスにゴミ溜めに住んでいるおまえはゴミだと言われたシリウス(当然その後大喧嘩になった)
「(シリウス、ちゃんと片付けてるかなぁ)」
そう思いながらもハリーは書類がないかどうか辺りを見回しながら今度は現在の同居人に思いをはせてみる。
セブルスが失せ物をするなんて珍しい。
いつも一分の隙も無く本棚に納まっている本を一冊ずつ片端から探した。
自分の物を探すのは慣れていないんだよね。
いつのまにか自分よりも躍起になって探すハリーの姿にセブルスは何か思い出すものがあった。
そういえばいつも彼は自分に全力でそれこそ体当たりといったほうがいいかもしれないくらいの勢いで好きだの愛しているだのと繰り返してきたな、とセブルスは昔のことを思い出していた。
思えば彼は随分むちゃくちゃなことをしていた。
取れもしないだろうに魔法薬学の小テストで満点をとったら手を握ってもいいかだの授業の準備に押しかけてきて間違った材料を切り刻んで台無しにしたり、
開始1分でスニッチをとって得意げに・・・
スニッチという単語でセブルスはどうしてハリーが自分の部屋にきたのかを思い出した。
「ところで試合の方はいいのか」
「あーー。しまった!」
「はやく行ってこい!!」
「いってきまーす」
ハリーが消えていった暖炉を見つめながらセブルスは呟いた
「・・・まったく本当に落ち着きのないやつだ」
そう呟いた声には呆れが、そして顔には普段の恋人に向ける笑みとは違う種のものが浮かんでいた。
結局、書類は見つからず、3日後に帰ってきたハリーは
「これはきっと僕の扶養家族になれっていう天の思し召しなんですよ」
と言ってしまい、1週間の締め出しをくらう事になるのであった。
*)
本当はこの話が初めて書いたハリスネ同棲話なんです。
外国の方が日本に住むのは大変なんですが、私の都合(と書いて萌えと読む)でセブルス達のお住まいは日本に決定。
タイトルの意味はドイツの妖精・ハインツェルのことです。
この妖精は家主がいないうちに片付けをしてくれる、座敷童子と似た性質をもっているそうです。
因みに当サイトでは5巻の内容一部スルーです。
注)Heinzelaennchenはaのウムラウトを表示できなかったのでaeと打ちました。