■ ハリーとセブ同棲話その1■
・ハリーはクィディッチのプロ選手
・セブは自宅のラボで薬学の研究に没頭
・ハリーは2階、セブは地下とお互いの領域が決まっている。セブの領域への不法侵入は厳罰(ハリー限定で)
・食事とティータイムへの出席は必ず
*オッケーな方は下スクロール
be in a good mood
流行りのバラードがハリーとセブルスの共有スペース(リビング)にかかった。
ゆったりとしたテノールで恋人に永遠の愛を誓う歌でここ最近の一番のヒットだと言われている。
昼時、二人がなんとなく一緒にいる時は洋楽や邦楽クラシックジャズなどジャンル関係なしに部屋に音楽が流れることが多い。なかでもこの曲は最近のハリーのお気に入りだ。
ところが曲が流れた途端ハリーが次の曲に突然飛ばしてしまった。きちんと聞いていたわけではないが今まで流れていたものが突然中断されるのは不愉快だし、いつもはセブルスに了解を得てから行動するハリーにあるまじき行為だった。
「どうした。あの曲は気に入っていたのではないのか」
かくいうセブルス自身も結構気に入っていたのだがそれを言うと目の前の男が調子に乗るのが目に見えているので黙っていた。彼は釣った魚にエサはやらない主義だ。
「嫌いになりました」
不機嫌そうなセブルスにハリーはあっさり言い放った。
「歌では永遠の愛を誓っておきながら実生活では不倫なんて」
大人ってキタナイ―と言おうとしたハリーはそれを飲み込んだ。彼は先月20歳の誕生日を迎え大人の仲間入りを果たしたのだ。尤もホグワーツを卒業した時点で成人したと魔法界では見なされるのだが。
そんなハリーの心境を知ってか知らずかセブルスはため息をつきながらハリーを正面から見据えるようにソファに座った。
セブルスとハリーは今年で出会って9年ほどになる。
痩せぽっちだった孤児はあの頃からは想像がつかないほど逞しく成長し、今ではプロのクィディッチ選手として世界を飛び回っている。おそらく後何年かしたら人々の彼に対する認識は「世界を救った英雄」から「イングランドの名シーカー、ハリー・ポッター」に変わるだろう。
しかしどんなに外見や年齢、社会的地位が変わろうとも決して変わらないものがある。
それがこの潔癖でともすれば幼稚に思えるほどの真っ直ぐさだった。
歌と歌い手は全く別物だとセブルスは思うのだがハリーには許せないらしい。
「永遠などというものは存在しない。おまえはそれを求めた人間の末路をその目で見たはずだ」
闇の王として未来永劫、魔法界のみならず人間界までもを支配しようとした男は2年前、自身の業火によって灼かれた。
「ごめんなさい、セブルス」
当時のことを話すのはまだ彼らの間ではタブーとされていた。ハリーもセブルスもあの戦いでたくさんの友人知人を失くした。セブルスは元はあちら側の人間ということもあり彼への呪詛を吐きながら逝った者も多い。
「別に謝ることではなかろう」
珍しく殊勝なハリーの言葉をセブルスは鷹揚に受け流した。いつもは喧しいハリーが黙っているため久しぶりに静かなティータイムが過ごせるかもしれないと思うと自然と彼の機嫌は上昇した。別にハリーが疎ましいわけではない。ただ一人でいた時間が長すぎて他人の気配すら煩わしく思える時があるのだ。だったらわざわざハリーのいるリビングに行かなければいいのだが個室で一人で茶を飲むよりハリーと一緒に飲む茶のほうが格段に美味いのだ。
心地よい気配と静寂の中で紅茶を飲みながらセブルスは思った
永遠でなくてもお互いが生きている限り思いを分かちあえさえすればいいのだ
死んでからのことなんて誰もわからないのだから
*昼寝する前に降って沸いた同棲ネタ。
ようやく両方が揃っているハリスネが書けました。
でもハリスネというか精神的にはスネハリ・・・いえ、ハリスネということにしといてください(汗