■ハリスネ同棲話その8■
・ハリーはクィディッチのプロ選手
・セブは自宅のラボで薬学の研究に没頭
・ハリーは2階、セブは地下とお互いの領域が決まっている
・1階のLDKが共有スペース
・食事とティータイムへの出席は必ず
完全に乗り遅れましたがW杯ネタです。






しあわせのあかいソファ









「何だ、これは」
「ソファですよ。見て分からないですか?」

「そうではない。何でこんなものがここにあるのだ?」
「僕が買って、さっき業者(クロブタヤマダ)が置いていってくれました。組み立てもやってくれるなんて日本人は親切ですね。あとTVも買いましたよ!チジョウハデジタル対応ってどういう意味ですか?」
「私も知らん!大体、この家でTVが映るのかどうかも分からないというのにどうしてそんな高いものを・・・」
「あ・映った!うわっ、イギリスのやつよりキレイだ!セブルス、こっち座って見てくださいよ!」
「・・・」
こっち、こっちとバンバンとハリーはソファのクッションを叩いた。

「なぜ機械類がこの家で正常に動くのかは置いておこう、TVはいい。このソファは何だ!」
ようやく本題に移れるが、先ほどからセブルスが問題にしているソファとは、真っ赤な革張りの広いリビングには不釣合いなくらい小さなソファだった。

「だって、今あるソファは低すぎてTVと合わないし、もう一つくらいあった方が部屋の殺風景さが薄れるかなと」
「あくまで、はぐらかすつもりか」

もう少し厳密に言うとそれは二人用の、俗にラブソファというものだったのだ。
なぜセブルスがそんなものを知っているかというと、彼が愛読している通販雑誌(メルベゾン、通販人生など複数)で見かけたからであった。

「僕には夢があるんです」

今までのらりくらりと惚けていたハリーが、アメリカ大陸でもっとも有名な演説のひとつの出だしを口にした。

「W杯イングランド全戦を、大切な人とこのソファーで観戦したい!もちろんビール付きで!」

思わぬハリーの力強い告白にセブルスは困惑した。
日本の生活にようやく慣れて、今では日常会話はもちろん平仮名に始まって片仮名、漢字すらも読むことができる彼だが、皮肉なことにイギリスのマグル世界についてはほとんど素人である。イギリスのマグルの生活習慣など全くわからない。
なので、W杯とはそれほどイギリスのマグルにとって重要なことなのかと、彼にしては本当に珍しく、ハリーの事情がわかる人からするとかなり無理のある告白を鵜呑みにした。

そこまで言うなら叶えてやってもいい、と寛大な気持ちになれるくらいにはセブルスのハリーに対する態度は軟化しているのである。・・・ハリーの日頃の努力の賜物であった。

「しようのないやつだ。イングランド戦だけならつきやってやる」

そもそもベッカムやルーニーどころかW杯、フットボールすら知らないセブルスだったが、ハリーの必死さに折れた形となった。


そうしてドイツW杯期間中、ハリーは念願のセブルスとラブソファでサッカー観戦!紅茶付!という夢のようなシチュエーションを5回味わうことができたのだった。

残念ながら、準々決勝にてイングランドはポルトガルに破れてしまいハリーの幸せな時間は終わりを告げたがスリザリン顔負けの狡猾さでハリーは次の手を考えていた。
ハリーの企みは実を結び、今やセブルスはフットボールの試合がある度に真っ赤な背凭れがハート型のカップル席に座るようになった。


ほとんどの望みを叶えたハリーだったが、しかし小さな誤算がひとつあった。


そのちいさな誤算が大きく膨らんでいくのはもう少し先の話である。












*)
リクエストで「CPトークのハリスネ設定の”ラブソファでロイヤルミルクティ飲むくらい仲良し”の話が読みたい」というのをいただいたので早速作ってみました。・・・こんなのでいいでしょうか?
セブが大人しくソファで紅茶飲んでるのは今までの話からすると不自然なのでW杯と絡めて見ました。
お金持なハリーが羨ましいです。